サミュエル・L・ジャクソンとクリスティーナ・リッチW主演の人間むき出し映画。ここまで感情をさらけ出せれば、どれだけ気持ちいいんだろう。うらやましい。愛のむきだし。
アメリカ南部の片田舎。妻に逃げられ、孤独な日々を送る初老の元ブルース・ミュージシャン、ラザラス。ある日、彼は道端に倒れている半裸の若い女性を見つけ、自宅に連れ帰り介抱する。彼女の名前はレイ。幼いときのトラウマが原因でセックス依存症となってしまい、昨晩も、恋人ロニーの入隊で孤独に耐えきれなくなり、男を求めて町を彷徨った末、手ひどい暴力を振るわれてしまったのだった。やがてレイは意識を取り戻すが、敬虔なラザラスは彼女の心に深い闇を見出す。そして、自らその闇を追い払うべく使命感を抱いた彼は、逃走を試みるレイを鎖で縛り付け、独自の方法で“治療”を開始するのだった。
ブラック・スネーク・モーン – allcinema
話の筋は結構ショートで、文字にしてみたら退屈かつ魅力が薄いんですけども、映像では主演の二人のおかげでここまで濃密で芳醇な深みのある味に変わるものなのか、と驚嘆させられてしまいました。サミュエルとリッチじゃなかったら、よくある不幸な女のリハビリ回復物語でほんと終わってたよ。それだけこの二人のパワーがすごい。
そこを信じきれなかったのか、マーケティング的に迷走してしまった感のある映画イメージにはちょっとガッカリかな。鎖で主従関係を思わせるサミュエルとリッチの画からは、完全なる飼育系のサイコスリラー感が満載で、パッと見アピールしたい層にはスルーされがちになると思うんだよね。そこをしっかりした骨太のヒューマン系なんだ!と伝えきらない配給会社の狡猾さが透けて見えて、なんともうーんな気持ちにさせられるんだよなあ。
ポスター、パッケージに騙されず、人間自身に向き合いたいときに観ておきたい1本。見ごろは深夜帯で間違いないっしょ。